先生の本、読みました?~第二回 神林尚子先生~  (教員著書紹介)

みなさんこんにちは。

まりもまりりんです。
卒業年次生はもう少しで卒業式。在学年次生のみなさんは、また新しい学年での4月が始まる前の落ち着いた日々。いかがお過ごしでしょうか。

「沙巴体育投注_沙巴体育官网-在线app下载の13人」に引き続き始まりましたこのシリーズ。「先生方の著書紹介 先生の本、読みました?」不定期ですが続けて参りますよ!今回は近世文学ご専門の神林先生です。

神林先生は、つい先頃論文をおまとめになり上梓されたばかりですので、そちらについてご紹介しようかと思いわたくしまりりん、拝見しました。…しかしまりもには少々難しすぎました。

そんなまりもにも楽しく読めるご本を先生はご紹介くださいました!
学生の皆さん、高校で古典を学ぶ皆さん、社会人で古典から遠ざかった大人の皆さんにもきっとご興味を持っていただけるような本ですので、こちらをご紹介しましょう!ということになりました。


『和本図譜 江戸を究める』日本近世文学会編 2023年10月発行 文学通信
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-86766-025-6.html

―神林先生、素敵なご本を紹介してくださってありがとうございます。この本は近世文学会70周年を記念して出版されたとありますね。70周年、おめでとうございます!
「間口は広く、奥行きは果てしなく」と、はじめにのところにありますが、希望すれば近世文学会には誰でも入会することができるのですか?

まず、70周年のこと、ありがとうございます!思えば長い歩みですね。周年記念には、講演会などの企画が行われることもありますが、記念出版物の刊行は、前回は50周年の時でした。20年ぶりの冊子刊行に向けて、編集チームの中心メンバーは、かなり時間をかけて企画を練られたようです。

「間口は広く、奥行きは果てしなく」は、なるべく多くの方に、気軽にこの本を手に取ってほしい!という思いを込めた言葉ですね。切り口は幅広くハードルは低く、でもその先のディープな面白さにも触れてもらえたら…!というメッセージでもあります。今回の出版物は、会員向けという以上に、学会の外の方に近世文学の面白さを少しでも届けたい、というのが出発点でした。学生さんや院生さんはもちろん、年齢や職業を問わず幅広い方々に、近世文学の世界を知って頂くきっかけになれば嬉しい限りです。

入会については、一応は紹介制というか、会員1名の推薦が必要ですが、学会員の誰か(指導教員やゼミの先輩など)にサインをしてもらえば良いだけなので、事実上はハードルが高いわけではありません。むしろ、新規会員の参入は大歓迎!というのが学会全体の気質です。(特に、若い方が増えてくださるとみんな喜びます!)

―この本は、とても幅広い世代(国を越えてでも!)楽しんで興味を持っていただける本なのでは、とわたくしまりりんも思いました。

学会員は紹介制なのですね!「一見さんお断り」的な、なんとなくかっこいいイメージですが、そこまで格式高い閉じた世界ではないのですね。神林先生の紹介で、学生さんも会員になれますね。ぜひみなさん、会員になって近世文学の世界に一歩足を踏み入れましょう!

―本体の表紙(カバーをはずしたところ)はエメラルドブルー、開くと黄色、というクジャクのように鮮やかな色ですが、色の選択はなにか理由があるのですか?

カバーを外した配色、気がついていませんでした!さすがまりりん。
言われてみれば、本の全体にわたって、色の選択も工夫されていますね。編集責任者の木越俊介先生か、あるいは版元(文学通信)の編集さんのセンスかもしれません。
木越先生も、美術にも関心が高い方ですし、文学通信の編集さんも、デザインやイラストのスキルが高いことで定評があります。

―神林先生がおっしゃった、木越先生というのは、国文学資料館教授の木越俊介先生です。

デザインに関して言えば、今回の『和本図譜』は、「本のグラビア」を目指したい、というのが方針の一つでした。
和本(古典籍)の魅力について、中身(内容)だけでなく、見た目の美しさに焦点を当ててみたい、という趣旨です。ファッション誌やインテリア雑誌のように、モノとしての本の魅力をグラビアで魅せる本があってもいいのでは、という発案ですね。実際に、和本には装訂に凝った本も多いですし、挿絵や口絵など、細部まで数々の工夫が凝らされています。
「見て楽しい」ことを入り口にしたのは、できるだけ広い層の方に手に取ってもらえるように、という願いから来ています。また、装訂やデザインなど、本の「顔」にあたる要素は、中身とも密接に関わっています。見た目の楽しさを通じて、内容の奥深さにも触れてもらえたら嬉しいです。(さっきの「間口は広く…」の話と重なりますね!)

―「本のグラビア」!確かにそうですね。第一部はとても色鮮やかな写真たちが並んでいて、眺めているだけでもあっという間に時間が過ぎてしまいます。

―最初から最後まで近世文学初心者でもわかりやすくおもしろい内容で心惹かれますが、ついつい神林先生のお名前を探してしまいますね!
神林先生がインタビュアーになられていらっしゃるページ、「延広真治氏に聞く 江戸と明治の落語を追って」。
東京大学名誉教授、延広真治先生のインタビューのご担当になられたのは、神林先生が落語がお好きだということとなにか関係があるのでしょうか

自分の話をするのは恐縮ですが、いち落語ファンであるのと同時に、研究の上でも落語を対象の一つにしています。落語や講談は、江戸の小説や浄瑠璃?歌舞伎など、様々なジャンルとも関わりがあって、近世文学の研究の中でも重要なジャンルの一つです。
延広先生は、落語などの話芸研究の第一人者で、小説や演劇などの分野も含め、本当に偉大な成果を発表し続けておられます。個人的にも、ずっと敬服しながら論文を拝読してきた先生なので、インタビューをさせて頂けたのはとても光栄でした。(緊張もしました…)

インタビューは、本の後半(第二部)の企画です。和本をグラビアとして魅せる第一部と、先人たちの研究のすごさを伝える第二部、という二本立ての構成は当初からの方針でした。70周年の節目を迎えて、偉大な足跡を刻んできた先人の声を聞き書きして残すことを目指しています。

―神林先生は落語好きだけでなく、落語をご研究されていらっしゃるということで、インタビュアーに抜擢されたのですね。尊敬されていらっしゃる大先生へのインタビュー、さぞかし緊張のお時間だったことでしょう…。質問される文章から尊敬の念がにじみでています。

―延広真治先生との出逢いで、印象的なことなどありましたら教えてください。

「出逢い」…というお尋ねなので、本当に一番最初にお目にかかった時の思い出をお話しますね。
最初にお目にかかったのは、たしか沙巴体育投注_沙巴体育官网-在线app下载生の終わり頃か院生のはじめ頃、研究上の関心が近いということで、ゼミの先生から紹介して頂きました。
駅のホームでお会いしたのですが、事前にメールで待ち合わせの日時などをご相談した際に、「山と川との合言葉で」と書いてくださったのが忘れられません。
(※ 蛇足ながら、「山と川との…」は、忠臣蔵の討ち入りの際に、赤穂義士たちが合言葉として使ったものと伝えられています。)

―なんともドラマチックな…。そもそも約束の場所を「駅のホーム」と指定されることもなかなかない場所ですね。
そしてさすが近世文学研究者の待ち合わせ。「山と川」の合言葉で初対面の人と出逢いを完遂させるとは、なんともユニークです。

―インタビューの「おわりに」を読んでいますと、おおらかで、優しい先生なのかな?と思うのですが、実際のところ、どうなのでしょうか…ドキドキ。厳しい先生で有名なのですか?それとも、文章から受ける印象通り温厚なお人柄というところなのでしょうか?

私がこれまで拝見してきた限りでは、本当にお優しくてあたたかくて、濁りや淀みを一切感じない先生です。
研究のすごさは勿論ですが、お人柄としても本当に尊敬しています。
学問については厳しい一面もお持ちですし、たとえば論文の審査の際には、厳しいご指摘をされていた場面も拝見したことがありますが、
それも学問に対して、論文の書き手に対しての誠実さと真摯さのあらわれだと思います。(言わずに済ませる方が楽ですが、相手のためにはなりません。)

―「雑談の時は優しいけれど、仕事に対しては鬼のようで…(泣)質疑応答には涙を流す発表者も多く死屍累々…」というわけではないのですね。よかった。ドキドキしました。
「学問に対しての厳しさは、相手に対する誠実さ」というのは、本学の先生方(ご退職なさった先生方もそうでしたが)にも通ずるところがありますね。例会やゼミの発表でとても厳しくコメントされるのをみかけます。それはたとえ分野が違っても、未熟な学生でも、真摯に向き合い、誠意をもっていらっしゃるからこそのお言葉なのですね。

―さいごに、この本を作るにあたり編集会議など開かれたのですか?それも、インタビューと同じくZoomでおこなわれたのでしょうか。

編集会議は、何度か行われましたが、いずれもZoomでした。東に西に、執筆者の住んでいる場所も様々でしたので、その点便利な時代になりましたね。画面上での顔合わせではありましたが、編集責任者の木越先生のご配慮で、自己紹介に「研究以外の趣味の話」のお題を加えるなど、互いに親しみを持てる雰囲気を作ってくださったのがありがたいところでした。

―本当に便利な時代になったものです。コロナのおかげでこういった手法も一般的になりましたから、あの時期も悪いばかりではありませんね。木越先生の心遣いもさすがです。対面でない分、人と人とのかかわりが深まる気軽な会話は大切ですね。
学生のみなさんも、ぜひZoomでの授業やこれから仕事でオンライン会議ツールを使っていくときにこういった「気遣い」は、勉強になりますね!学んで、ご自身でも使ってみましょう。

さて、みなさん、いかがでしたでしょうか。
『和本図譜』。手に取ってみたくなりましたか?
神林先生、丁寧にお答えくださりありがとうございました。

図書館にももちろん蔵書されていますし、何度読んでもおもしろいですから、海外旅行や留学の際に現地の方と交流するために購入してずっとそばに置いておいても良いのではないでしょうか!

ここに書いていない裏話を聞きたい方もぜひ、読後神林先生の元に行って質問してみましょう。

次回もお楽しみに。         まりりん            2024.3.7